2005年4月14日木曜日

日経:「農家自身が農地を捨てた。企業の参入を防ぐ理由はない」(山下一仁)



4月12日の日経。「WTO体制の農政改革」として二人の専門家へのインタビュー。大切なことなのでメモしておく。(感情的なコメントはお断りする)

山下一仁(経済産業研究所上席研究員):
  1. 政府は補助金改革で直接支払いの導入を打ち出したが、支払い対象は麦や大豆に限られ、肝腎のコメがはずれた。食糧自給率の向上につながるか疑問だ。
  2. 農地の転用規制を強化し、参入は誰でも出来るように全国的に解禁すべきだ。農地はピーク時(1961年)の約600万ヘクタールから現在は470万ヘクタールまで減った。そのうち半分は住宅地などへ転用され、残りは耕作放棄地。
  3. 転用規制が弱いため、農家自身が農地を捨てた。企業の参入を防ぐ理由はない。
  4. 食糧安全保障の基本は農地だ。農地さえ確保しておけば、いざというときに食糧生産できる。
  5. 関税引き下げに耐えられるよう、WTO交渉が決着する前に農政改革を実現すべきだ。特に小規模農家が多いコメは規模拡大が必要。


C・パー・ラーソン(テキサスA&M大学教授):
  1. 日本は新しい基本計画で農産物の輸出促進を目標に掲げた。それには国際競争力を高める必要があり、農地の集約化など改革は大切だ。
  2. 米国は改革を実行し、農家一戸当たりの農地面積も400エーカー(160ヘクタール)と従来の十倍近くまで大規模化した。農家の数は減り、労働集約型から資本集約型に変わった。
  3. 一方、EUは小規模な農家も残しながら競争力を高めるという違う道を選んだ。日本もどちらかの方法を選択して取り組めばいい。

企業の農地購入解禁が先送りされるとか、コメが直接支払制度から除外されるなど、日本の農業改革はいっこうに進まない。農水省及び政府自民党にとっては、日本の「農業」よりも日本の「農家」の方が大切であるからだ。

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